「工場で働きたいけど、資格がないと働けないのかな」と悩んでいませんか?
結論をいうと、工場勤務は資格や特別なスキルがなくても、問題なく働けます。ただし、資格があれば任される仕事の幅が広がり、職場で一人前として早く認められるでしょう。
筆者も14年間工場で働いていましたが、入社時点では資格は「普通自動車免許」1つしかありませんでした。
製造業の会社の中には、働きながら必要な資格を取得させてもらえる会社もあります。筆者も働きながら4つの資格を取り、スキルアップしつつ給料アップにもつながりました。
本記事では、工場勤務で役立つおすすめの資格を10個紹介します。この記事を読めば、工場にはどんな資格があるのかが理解できます。職種に合った最適な資格を選べるようになり、効率よくスキルアップや昇給につながるでしょう。
これから資格を取ろうと考えている人は、ぜひ最後までお読みください。
工場は資格がなくても働ける
工場の仕事は、資格がなくても働けます。製造業の仕事は、マニュアル化された作業も多いため、「入社してから覚えてもらう」という前提で採用している企業が少なくありません。
求人サイトを見ると、学歴不問・未経験歓迎と記載された求人が数多く掲載されています。工場・製造業の求人が探せる「工場ワークス」で「未経験OK」の条件で調べると、約15,000件もの仕事が見つかります。
さらに、入社後に資格を取らせてくれる会社も多いです。業務に必要な資格は、講習や受験の費用を会社が負担してくれるケースもあり、働きながらステップアップできます。
面接時に「資格は取得できるのか」「現場で必要な資格は何か」を確認しておくと、入社後のキャリアプランも描きやすくなります。
資格を取得する3つのメリット
製造業では、資格を取得することで以下のメリットが得られます。
- 給料アップにつながる
- スキルアップしやすい
- 転職するときに有利になる
給料アップにつながる
資格を取得すると、給料がアップする会社は多いです。厚生労働省の令和元年度「資格・検定等の人員配置、昇格及び賃金への反映状況等に係る実態調査」によれば、月々の資格手当を支給する企業は41.0%もあります。
また、昇給の際に考慮(23.6%)、一時金の支給(20.0%)、基本給を決める際に考慮(18.0%)など、資格取得後の給料アップを前向きに考えている会社の割合は高いです。
月々の資格手当は、年収アップに直結します。例えば、資格手当が月10,000円なら、年収は12万円アップするため、生活に余裕ができるでしょう。
スキルアップしやすい
資格を取得していると、資格を持っている人しかできない作業を経験できるため、スキルアップにつながります。例えば、危険物取扱者を持っている場合、以下のことができます。
- 指定されている危険物の貯蔵・移送・調合
- 安全管理や施設管理
このように資格を持っておくと、任せられる業務も広がります。そのぶん、覚えることも増えますが、その人しかできない仕事になり、周りから頼られるでしょう。
転職するときに有利になる
資格はどこの会社でも通用するため、転職するときに有利です。
例えば、フォークリフトの資格を持っていると、会社は「現場で動ける即戦力」と評価してくれるため、採用率が上がります。
万が一、今の会社が倒産して地元に帰ることになっても、資格があれば仕事に困りません。資格を取って損することはないので、チャンスがあれば積極的に取りましょう。
工場の資格難易度別おすすめ10選
工場の資格には簡単なものもあれば、難しいものもあります。そして、多くの資格には、筆記試験や実技試験があります。真面目に話を聞いていないと試験に落ちて資格が取れなくなってしまうため、居眠りなどしないように注意しましょう。
ここでは、工場の資格を難易度別に10個紹介します。(難易度は★〜★★★の3段階で表示します。)
有機溶剤作業主任者
| 受験資格 | 満18歳以上であれば誰でも受験可能 |
|---|---|
| 難易度 | ★ |
| 試験内容 | ・健康障害及びその予防措置に関する知識 ・保護具に関する知識 ・作業環境の改善方法に関する知識 ・関係法令 |
有機溶剤とは、油や樹脂を溶かす液体のことです。工場の現場では、塗料や接着剤にもよく使用されます。自動車部品・金属加工・印刷・塗装・電子部品など、有機溶剤を使う業界は多いため、職場や業種が変わっても生かしやすい資格です。
有機溶剤作業主任者とは、作業者全体を管理し、労働災害が発生しないよう指揮・管理するための方法を学べる資格です。
筆者もこの資格を持っており、講習を2日間受ければ取得できます。取得難易度は低く、はじめて資格を取る人におすすめです。
床上操作式クレーン運転技能講習
| 受験資格 | 満18歳以上であれば誰でも受験可能 |
|---|---|
| 難易度 | ★ |
| 試験内容 | ◾️学科 ・床上操作式クレーンに関する知識 ・床上操作式クレーン運転技能講習に係る原動機および電気に関する知識 ・床上操作式クレーン運転のために必要な力学に関する知識 ・関係法令 ◾️実技 ・床上操作式クレーンの運転 ・床上操作式クレーン運転のための合図 |
床上操作式クレーンとは、地面に置いてある荷物を、天井に設置されたクレーンを使って操作するための設備です。人の力では簡単に持ち上がらない荷物でも、簡単に移動できます。
この資格は汎用性が高く、以下の現場で活躍します。
- 自動車工場
- 鉄鋼
- 機械加工
- 造船
- 倉庫
筆者も床上操作式クレーン運転技能の資格を取得しています。講習の最後には、制限時間内に指定された場所に荷物を運ぶ実技試験がありました。操作が雑になると荷物が崩れてしまい、失格になるため、注意しましょう。
フォークリフト運転技能講習
| 受験資格 | 満18歳以上であれば誰でも受験可能 |
|---|---|
| 難易度 | ★ |
| 試験内容 | ◾️学科 ・荷役に関する装置の構造 ・取り扱いの方法に関する知識 ・運転に必要な力学に関する知識 ・関係法令 ◾️実技・走行操作 ・荷役操作 |
フォークリフトとは、車体の前面にあるフォーク(爪)を使い、荷物の積み下ろしを効率的に行える車両のことです。工場・倉庫・貿易など、幅広い現場で使用されています。
この資格は工場だけでなく、物流やホームセンターのバックヤードなどでも活かせます。業種や職場が変わっても使える汎用性の高い資格です。
フォークリフト運転技能講習では、普通運転免許を持っている場合は4日間、持っていない場合は5日間の講習を受けます。運転免許を持っていない人でも挑戦できるため、おすすめです。
玉掛け技能講習
| 受験資格 | 満18歳以上であれば、誰でも受験できる |
|---|---|
| 難易度 | ★ |
| 試験内容 | ◾️学科 ・クレーン、移動式クレーン、デリック及び揚貨装置に関する知識 ・クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識 ・クレーン等の玉掛けの方法 ・関係法令 ◾️実技 ・クレーン等の玉掛け ・クレーン等の運転のための合図 |
玉掛けとは、クレーンなどの吊り具(フック)に、ワイヤーやベルトスリングをかける作業です。一見、誰でもできそうな内容ですが、正しい方法を知らないと荷物が崩れ、労働災害につながることもあります。
玉掛け技能講習では、ワイヤーやスリングの正しい付け方や道具の選び方などを学べます。床上操作式クレーン運転技能講習と一緒に取得すると、荷物をフックに掛けるところから目的地に荷物を降ろすまでを、1人で作業可能です。
金属加工、機械製造、物流倉庫など多くの現場で活躍します。
筆者も玉掛けの資格を持っており、現場では100キロ以上の重さを吊り上げる場面は多くありました。玉掛けを学んだことで、14年以上荷物を落とすことなく、災害もありませんでした。
どんな業種に就く人でも、持っておいて損はない資格です。
危険物取扱者
| 受験資格 | 誰でも受験可能(年齢・国籍問わず) |
|---|---|
| 難易度 | ★★ |
| 試験内容 | ・危険物に関する法令 ・基礎的な物理学及び基礎的な化学 ・危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法 |
危険物取扱者とは、消防法で定められた危険物を取り扱ったり、危険物の取り扱いに立ち会ったりするために必要な国家資格です。
工場では、薬品や有機溶剤を使用します。使い方を誤ると、火災や爆発につながりかねません。この資格では、物質ごとの特性や、火災が起きたときの正しい消火方法、関係する法令について学びます。
資格を取得すると、無資格者の立会いができたり、危険物の管理ができたりと、キャリアアップにつながります。
工場以外にも、ガソリンスタンドやビル管理などにも役立つ資格です。
ボイラー技士
| 受験資格 | ・特級:一級ボイラー技師の資格を有しているもの ・一級:二級ボイラー技師の資格を有しているもの ・二級:誰でも受験可能 |
|---|---|
| 難易度 | ★★ |
| 試験内容 | ・ボイラーの構造に関する知識 ・ボイラーの取扱いに関する知識 ・燃料及び燃焼に関する知識 ・関係法令 |
ボイラーとは、食品工場やクリーニング工場などで使われる蒸気や温水を作る機械のことです。具体的には巨大な圧力釜のような設備で、扱いを誤ると破裂事故を起こしたり、故障して工場の生産ライン全体を止めてしまったりする恐れがあります。
ボイラー技士の資格では、ボイラーの構造や燃焼の仕組み、安全に運転するための点検方法などを学びます。しっかりと勉強する時間を確保すれば合格できる試験のため、手に職をつけたい人におすすめです。
衛生管理者
| 受験資格 | ・大学、短期大学、高等専門学校卒業者:「一年以上」の労働衛生に関する実務経験 ・高校卒業者:「三年以上」の労働衛生に関する実務経験 ・中学校卒業者:「十年以上」の労働衛生に関する実務経験 ・最終学歴に関わらず:実務経験が「十年以上」ある場合 |
|---|---|
| 難易度 | ★★ |
| 試験内容 | ・関係法令 ・労働衛生 ・労働生理 |
衛生管理者は、一言でいうと労働者の健康を守る資格です。安全そうに見える職場でも、有害な化学物質や騒音、照明、長時間労働によるストレスなど、健康を害する見えないリスクは意外に潜んでいるものです。
例えば、作業場の音がうるさい状態を放置すると、長期的には難聴などの健康被害につながります。衛生管理者はこうしたリスクに気づき、次のような対策が取れます。
- 騒音レベルを測定する
- 基準値を超えていれば、防音パネルの設置や耳栓・イヤーマフの支給を提案する
- 長時間同じ場所で作業しないよう、ローテーション勤務を組む
衛生管理者がいることで、「なんとなく体に悪そう」という状態から、「何がどれだけ危険か」「どう変えれば安全か」をはっきりさせて職場を改善できます。
クレーン・デリック運転士
| 受験資格 | 満18歳以上であれば誰でも受験可能 |
|---|---|
| 難易度 | ★★ |
| 試験内容 | ・クレーン等知識 ・関係法令 ・原動機・電気知識 ・力学知識 |
クレーン・デリック運転士とは、工場や建設現場などに設置されている大型クレーンを運転するための資格です。鉄筋や鉄骨を空中で移動させるため、クレーンを動かす基礎知識や正しい合図などを学びます。
この資格には、扱うクレーンの大きさに上限がありません。資格を取得すると、どんな大きさのクレーンでも操縦できるようになり、造船所やビルの建設でも即戦力として活躍できます。
製鉄所、造船所、重機メーカー、大規模な資材センターなどに就職したいと考えている人におすすめの資格です。
電気工事士
| 受験資格 | 第一種:三年以上の実務経験が必要 第二種:誰でも受験可能(年齢・国籍問わず) |
|---|---|
| 難易度 | ★★★ |
| 試験内容 | ◾️学科 ・電気に関する基礎理論・配電理論及び配線設計 ・電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具 ・電気工事の施工方法・一般用電気工作物等の検査方法 ・配線図 ・一般用電気工作物等の保安に関する法令 ◾️実技 ・電線の接続 ・配線工事 ・電気機器及び配線器具の設置 ・電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法 ・コード及びキャブタイヤケーブルの取付け ・接地工事 ・電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定 ・一般用電気工作物等の検査・一般用電気工作物等の故障箇所の修理 |
電気工事士とは、建物や工場の電気配線ができる国家資格です。電気は目に見えないため、感電事故や漏電による火災など、命に関わる重大な事故につながります。
電気工事士の資格は、機械のメンテナンスや設備が故障したときに役立ちます。製造業の機械のほとんどが電気で動いているからです。
例えば、トラブルが起きたときに、機械に原因があるのか設備に原因があるのかを切り分けたり、応急処置を行ったりできます。つまり、ただラインを動かす人ではなく、「設備に強い人」として頼られる人材になるのです。
工場には、機械・設備の修理や点検を専門に行う保全部署があります。電気工事士の資格を持っておくと、こうした部署への異動や昇進を目指しやすくなり、キャリアアップや年収アップにつながりやすい資格ともいえます。
機械加工技能士
| 受験資格 | 特級:一級合格後五年以上の実務経験が必要 一級:実務経験七年以上 二級:実務経験二年以上 三級:誰でも受験可能 |
|---|---|
| 難易度 | ★★★ |
| 試験内容 | 課題図に基づいた加工品の製作 |
機械加工技能士とは、旋盤やフライス盤などの工作機械を使って、金属を図面どおりに加工する国家資格です。
機械加工技能士は、自動車部品、航空機部品、精密機器など、金属部品を使う職種で必要です。等級には「三級・二級・一級・特級」の4つがあります。
- 三級:基礎的な加工ができるレベル
- 二級:現場で一人前として任せられるレベル
- 一級:難しい加工や段取りをリードできるレベル
- 特級:品質管理や工程管理、後輩指導なども含め、現場全体を見られるレベル
等級が上がるほど、品質管理や工程管理、後輩育成など、製造現場をまとめるポジションも担えるようになります。現場でモノづくりの職人を目指したい人や、いずれはリーダー・班長として活躍したい人におすすめの資格です。
まとめ:工場は資格なしでもOK!働きながら取得を目指そう
工場の仕事は、特別な資格がなくても問題なく働けます。現在、資格を持っていない人でも、会社から業務に必要な資格の取得を支援してもらえることもあります。
資格を持っていると昇給したり、有資格者しかできない仕事を任されたりとメリットも多いです。難しい資格であるほど「現場のキーパーソン」として見られやすく、困ったときに真っ先に名前が挙がる人材になれます。
いきなり難しい資格から挑戦すると、勉強量の多さや専門用語についていけず、途中で挫折してしまう人も少なくありません。そのため、「有機溶剤作業主任者」や「床上操作式クレーン運転技能講習」など、難易度の低い資格から始めてみるのがおすすめです。
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